すき、きらい、すき

すき、すき、すき

【ネタバレ有】映画「アイドル」

鑑賞後、3度ほど書いては下書きに保存して新しく書いては保存して…を繰り返していました。”感動"という言葉に纏めてしまうには、自分の中でもっと、もっとピッタリな言葉があると思ったのです。多くの方が言う「もやっと」のほとんどは、この複雑な感情のアンサーとして見つかる言葉が見当たらないからなのかな、と思いました。アイドルとは何か?の答えが、たった1つの言葉に集約できないように。

 

以下からはネタバレ含む内容あります。

f:id:cherrycream-r:20181022061439j:image

 

 

私の中に、あまりにも熱く、焼け跡がヒリヒリするかのように残る姿は、やはり松井珠理奈さんの涙と本音のカケラを零したシーンです。

SKE48で立つことを渇望するナゴヤドームのステージで細切れの映像でもわかるほどぬるっと進むリハーサル。言葉を柔らかくしながらもリハーサルの大切さを説く珠理奈さん。しかし、返ってきたのはあまりにも幼稚な、拗ねた言葉だったようです。

Twitterにも呟きましたが呆れてしまいました。もちろん其々のグループの価値観は違います。でも、かつて高みなさんが声を荒げて強い言葉を放ってまで当たり前に大事にしていたことじゃないですか。今の珠理奈さんって相手のやり方を尊重する、無理なことはさせない、押し付けない、時にはメンバーを守るタイプの人間なんですよね。自分から主張してやり方を貫くことってあまり見ない気がします。一旦相手を受け入れる、そして擦り合わせてゆく。貴重なほどの経験と技術を惜しみもなく後輩に教えてあげてる。そんな人が全体に対して声をあげるほどのリハーサルって、一体どんな状態だったんですか…。私たちがその日を恐怖と少しの楽しみを持ち合わせて待つ間、彼女たちはどれくらいの思いをファンに向けてくれていたのか。

どれだけ彼女が48に感謝し、愛しているか。より長く、より近くファンに近づこうとしているのか。毎回どんな気持ちでステージに立つのか。どれだけ純粋な気持ちで48をより良くしようとしているのか。そしてどんな姿を見せようとしてくれているのか。その想いのカケラでもわかるからこそ……カメラの前で、後輩の前で涙を止めることが出来ずに零した本音。

「本当は泣いてる姿なんか見せたくない。でも最後までついてきてくれたのはSKEだけだから…私はSKEだけは裏切りたくない」

(この直前の言葉は文字だけだと誤解されてしまうので割愛します。ただ、そこが1番の本音だと思ってます)

恐怖を感じるほどだった、とSKEのキャプテンである真木子さんが話したように、あの時、珠理奈さんは必死に溺れてゆく身体でもがいていた。そして最後に縋って、最後まで信じていたものに救いを求めたんだな、と。

10年、青春も、身も心も、本音も、欲望も憤りも二の次にして48のためにボロボロになりながら走ってきた子が”SKEを認めてもらえた”と感じた地元開催の総選挙直前で信じてきたものがわからなくなり、そして泣き崩れた曲が「チャンスの順番」。なんて皮肉な。

“裏切り”をされた、と感じた彼女を思うと、あの日のステージの上でも、必死に助けを求めてたんだな、と思います。

f:id:cherrycream-r:20181022061754j:image

このシーン、微笑んでいるように見えて、あんなに辛そうな顔をしていたんですね。

タラレバなんて腐る程ある。怒りも、悲しみも通り越して、ただただ、グループが変容したのだな、と。(本店出)

この一連の騒動の真実は、たった1日を切り取っても、表に出ている部分だけを見ていても、ましてや彼女のファンでさえも、本当の意味では理解しきれないことなんだな、と思いました。

 

「今まで見てきた先輩が作ってくれた道を突き進みます」と選挙後のインタビューで答えていました。これは全盛期を第一線で乗り越えてきた彼女の48グループの1人としてのプライドなのだな、と思います。

ただの1人のモブヲタクとして、あなたの10年は間違えていないし、変容していくグループの中でずっと核を持ち続けてくれてありがとう、と伝えたい。誰よりもAKB48、48アイドルで居ようとしてくれてありがとう。

選挙後に優子さんのファンの方が書いたブログの一文、”たくさん48のことを考えてくれてありがとう。誰にもわかってもらえず辛かったね、苦しかったね、寂しかったよね”が、あの時の珠理奈さんにかけてあげたい言葉です。

 

そうして迎えた総選挙ではSKEメンバーの1.2フィニッシュがわかった瞬間の大矢真那さんの素直な喜びと、支配人湯浅さんの涙にグッときました。冒頭のSSA単独決定発表後のメンバーの涙も同様ですが、努力がひとつの結果として報われる瞬間の方がグッときました。

2位発表を待つ間、「1位がSKEメンバー(で確定だ)。SKEが1番だってことを示せた」と須田亜香里さんと珠理奈さんは交わします。嬉しそうにヘラヘラ笑ってたなんて、誰が言いはじめたのか、馬鹿馬鹿しすぎる。

ナレーションでの、「ファンが彼女に託した希望」という言葉、とても心に残りました。

 

珠理奈さんが休養に入ってから、須田さんがセンターに立つことが多くなり、ただのポジションとしてではなくグループの顔としての重圧や責任に、須田さんもまた壊れかけます。三角形の前に進むほどスポットライトは眩しく当たり、何もかもを曝け出されるほど照らされ、そして影もより一層濃さを増す。

須田さんが珠理奈さんについて「弱い人間。弱さを曝け出せないところが弱い」って表していたの、須田さんだからこそ言える言葉ですよね。珠理奈さんが立つべき場所を守ってくれた人が、リスペクトも、優しさもアツさも持っている須田さんで嬉しかった。

松井珠理奈さんがステージに立てなくなってしまった夏は、私には例年よりも温度が低く感じました。夏の死。必死にその場を、グループを守ってくれているとは分かっていても、気温とともにあがるグループの熱量がより彼女の不在を強く感じさせました。盛り上げようとする他推しの方の声が煩わしく感じることもあった。

北川綾巴ちゃんが全てを出し尽くして立った夏のあのステージ。辛いのに、必死に溢れそうな涙を堪えて明るくいようとする姿がとても強くて、美しかった。その後のインタビューで、「珠理奈さんが居ない…と思った。こんなものを背負っていたんだ、ということも。珠理奈さんにはなれないけど、同じくらいアツく居られることは出来る」と発していました。

 

映画公開後、かなり頻繁に検索して感想を見ていたのですが、その中に”こんなに狭い中に閉じ込めて個性のないグループじゃないはずだ”という意見がありました。個性、ないんですかね。ちなみに私は各々が自分の個性を自由にしつつ、その核にはSKE48というグループがあるんだな、と感じています。個性って何だって話なんですけど。その人自身、であるならば見ようと思わなければ見えてこないですし。映画の中心である松井珠理奈の不在、も、珠理奈さんを語るベテランメンバーも、それが珠理奈さんだから、という訳ではなく同じグループの誰かのことをリスペクト出来る状態って、とても良いなと思います。珠理奈さんが初期から変わらずずっと大事なものを大事なままで居てくれるから。そしてそれをしっかりと理解してくれる後輩がいるから。そして10周年を迎える今、松井珠理奈須田亜香里という2人が先頭に立つSKE、めちゃくちゃ頼もしいじゃないか、と。

 

アイドルとは何か?

なんなんですかね。終わり方も含めて。リアルタイムで生きる生身の人間ですよ、ってことだと思うんですけど。だから終わりがないし、ハッピーエンドもバッドエンドもない、これはドキュメンタリーを模した映画"アイドル"なのである、と。

問いかけに対する答えは人それぞれだと思います。1回見ただけじゃ答えが見つからない。正解がない。だからきっと、「もやっと」感じてしまうんですよね。映画のレビューでもよく見ます(映画愛好家)

自分が成長すれば卒業してしまう先輩、努力では拭えない結果、求めれば求めるほど絡みつく夢の呪いと、スポットライトに照らされて落ちる影。正解なんてないし、間違いもきっとない。

 

この夏を越えて感じたのですが、私は何があってもステージに戻ってくる珠理奈さんが好きなんだな、と。もちろん本人の体調が、という気持ちはありますが、彼女がステージに立ってにっこり微笑む。今ままで何度も終わらせないでいてくれた幸福な夢の時間。

アイドルとは何か?なんて私にはまだ答えは見つからないけれど、スクリーンに映った彼女たちは、痛々しいほど、美しい故に強かった。彼女は、光。光彩陸離する煌めき。

 

結論

松井珠理奈さんかっこよすぎね????

紹介ターンでスローモーションのところ、美しすぎてスクリーン壊れるかと思った。

f:id:cherrycream-r:20181023090728j:image

 

見てから評価しろやい!

 

 

でも、アンチに見て欲しいとは思わなかった。

あの珠理奈さんの姿とあの想いは、分かる人だけでそっと宝箱に仕舞いたいほど、尊くて傷つけられたくなくて、私にとっても大切になった。

 

どうぞ、ご自身の目で、近場で公開されたらぜひ観に行ってください。

 

@amo_j38

 

11.1 2回目観てきたので細かいところ修正しました。